山上蒲鉾店ロゴ

石臼で練る

技について

板付き蒸し蒲鉾製造において、私達山上蒲鉾店は、原材料となる魚と、加工で使う水にこだわっています。
この二つを活かす為、私達は製造工程の最初から最後まで美味しい蒲鉾ができるようにこだわり続けています。

美味しい板付き蒲鉾とは

私達にとって、美味しい板付き蒲鉾とは、

ものです。

長い年月の中で変わり続ける環境に対応する

山上蒲鉾店は、創業明治11年(1878年)、2016年で創業から138年を迎えました。
それだけ長い歴史の老舗で、技にこだわっているのであれば、明治11年から延々と伝統の技を受け継いでいるのだろうと思われるかもしれません。

しかし、実際のところは、技は変わり続けます。 それは、私達を取り巻く環境が変わり続けるからです。

明治11年の創業の頃に比べて、色々なものが変わりました。

何一つ、明治時代と同じものはありません。
しかし、私達は、明治時代から美味しい板付き蒲鉾をつくるために、様々な変化に対応しながら、既存の技を磨き上げ、新しい技を開発してきました。

板付き蒲鉾づくりの工程

板付き蒲鉾をつくる工程は、基本的には、手作業でやっていたものが機械化されたりしていますが、明治時代と変わりません。

蒲鉾の製造工程
蒲鉾の製造工程

採肉の工程

魚の産地・鮮度・型・脂肪分を確認し採肉の仕方を決める。
採肉機のベルトを微妙に調整し、血合い肉を取除き白身の部分を採肉する。

こだわりポイント:白身の良い部分だけを取り出すことにこだわっています

水晒し

季節・産地・型・鮮度により魚の身質が違うため、脂肪分を見極め水量を決める。
水面の脂肪分量を確認して水量を決める。

こだわりポイント:魚の旨味をできるだけ残しつつ魚臭を取り除く

脱水工程

脱水機に入る直前に塩水を一滴から数滴垂らして水分調整をする。
しなやかな弾力を作るため適度な水分を保ちながら脱水する。

こだわりポイント:しっとりとした晒し身にする

擂潰らいかい工程

塩を添加するタイミングにより弾力や成型時のダレが変化するため、脱水後の身質を確認して塩を添加する温度やスリ上がり温度を決める。
季節による魚の身質の変化に応じて塩や砂糖等の調合を微調整する。
裏ごし後、石うすを使用して身の硬さを調整する。
寄せ身(小さめの板付き蒲鉾)を作り弾力・味を確認する。
スリ上がり身の最終チェックをする。

こだわりポイント:艶やかな、ねっとり感のすり身にする

※裏ごし ... 魚のすじを抜く。

型成工程

スリ上がり直後は身質がしなやかなため、板付き蒲鉾の形を作りダレ具合を確認する。
形が安定するまで置き身をする。
内容量を確認し、形が安定したら型成機をスタ−トさせる。

こだわりポイント:蒲鉾板から数ミリ膨らんだ形

蒸し工程

最初の20分は30℃から40℃で身を落ち着かせる。その後、80℃から90℃の温度で板付き蒲鉾を蒸す。中心温度を75℃まで上げる。
一時間毎に中心温度・弾力をチェックする。

こだわりポイント:柔らかな蒸気で芯まで加熱

冷却工程

蒸し上がり直後、水で板付き蒲鉾の表面を冷却する。
その後、一気に−10℃で冷却し中心温度を15℃以下まで下げる。これは、蒲鉾の中の水分量を保持するためです。
一時間毎に中心温度・内容量・品質を確認する。

こだわりポイント:みずみずしい、潤いのある蒲鉾に

包装工程

お客様へお届けするための最終工程です。
厳しい品質検査を行い、作り手の想いが伝わるように、包装を施しています。

こだわりポイント:お客様へ笑顔と感動をお届けする

何一つ同じものはない中で、最高の品質の板付き蒲鉾をつくる難しさ

世の中には、技術の進歩や、世の中の変化に伴い、仕事のやり方が変わっていく事の方が多いです。
しかし、板付き蒲鉾づくりについては、この工程は変わらないのです。
これは、一見すると、ごく当たり前の事だと思われるでしょう。

技術や機械が進歩しているのであれば、これらの工程のどれかが省略できたり、やり方を変えたりしても良いはずです。
ものづくりの難しさは、材料や道具、環境が変わり続ける中で、従来と変わらぬ高品質なものをつくり続ける点にあります。

昔から評判の歯ごたえ、味わい、美味しい板付き蒲鉾をお客様は期待して購入されます。
私達は、そのお客様の期待に応えて、変わらぬ歯ごたえと味わいの美味しい板付き蒲鉾をご提供したいと考えています。

山上蒲鉾店が、これらの製造工程の全てを自社で行う理由、それは、従来と変わらぬ美味しさの板付き蒲鉾をつくるためには、各工程で微調整を入れて、変わり続けるものへ対応するためなのです。
何も従来と変わらないのであれば、従来と同じように板付き蒲鉾をつくればいいのです。
しかし、実際は、全てが変わり続けます。魚も、水も、環境も。

そして、従来と同じ美味しさを維持するだけではなく、従来の板付き蒲鉾より更に美味しい板付き蒲鉾をつくる、それが伝統を受け継ぐ者の使命だと考えております。

職人の運命さだめ

板付き蒲鉾づくりにこの身を捧げて半世紀が過ぎます。厚生労働省認定の小田原板付き蒲鉾で初めてのものづくりマイスターに認定されました。
それでも、日々、「これでいいのだろうか?もっと美味しく作れるのではないだろうか?」と自問自答しています。
職人であるということは、決して答えを得ることのない、自問自答の旅を歩んでいくことだと思います。

先代がそうであったように、私も、この決して答えが得られない問いを抱えて生きてゆき、そして後継ぎにこの難問を引き継ぐのです。
伝統を受け継ぐとはそういうことだと思っています。
そして、この果て無き問いの中で、私達職人は、変化に対応するために努力をし、その変化への対応の経験こそが技として培われていくのだと思います。

だからこそ、私達山上蒲鉾店は、板付き蒲鉾の全工程を自社で行うことにこだわり、その工程一つ一つの細部の技にこだわるのです。
それが職人としての生き様なのです。